HRT
(ホルモン補充療法)
HRTは選択の医療

  HRTで未来を変えて至福の健康を手に入れる

HRTは更年期以降の女性のQOL(生活の質)を向上させる薬として
世界中のほとんどの国で数多くの女性から支持されています。

ホルモン補充療法(HRT)とは・・・・
  減少してきた女性ホルモンを、飲み薬や貼り薬で体内に直接補充することで、
  更年期に起こる様々な不調を軽減させるための治療法です。
  特にホットフラッシュなどの血管運動系の不調に対する効果は抜群です。
《メリット》
  @ Hot flash (のぼせ、ほてり、発汗過多)、動悸、知覚異常などの
    自律神経系、血管運動系の不調を改善する。
  A 血管の硬化を予防する。
    (悪玉コレステロールの分解と排泄を促し、善玉コレステロールの合成を促進)
  B 骨量の増加を促し、骨粗しょう症を予防する。
  C 皮膚の真皮層にコラーゲンやエラスチンを増やし、お肌の張りや潤いを保つ。
  D 膣粘膜の乾燥による痒みや痛みを改善する。 
  E 脳内神経伝達物質(セロトニン)の減少を抑え、不安感、不眠、うつ状態を改善する。
  F 大腸癌の発生リスクを下げる。
  G 認知症を予防する。
《デメリット》
  @ 嘔気や胸の張り(乳房痛)、おりものなどのマイナートラブル
      (いずれも服用初期のみで2,3周期以降は消失することが殆ど)
  A 5年以上の継続で乳癌のリスクがほんの少し上昇?
      (ただし1万人あたり8人の差でリスクがあるとは言えない程度)
  B 冠動脈疾患(心筋梗塞など)のリスクがほんの少し上昇
      (ただし70歳以上の方が行った場合だけ)
  C 血栓症と脳卒中のリスクがほんの少し上昇
      (ただし日本人の女性では事例がほとんどない)
《治療が受けられない方》
  乳癌、子宮体癌、冠動脈疾患、脳血管障害の既往や治療中の人
  (肝機能障害、糖尿病、高血圧、喫煙者、子宮筋腫なども重症の人は治療できないことがあります)





q&a
Q 更年期障害の治療にホルモン補充療法(HRT)がとても効果的と聞きますが、
癌の不安や何か人工的で不自然な気がして踏み込めません。どうなのでしょうか?

A HRTが不自然かどうかは個人の捉え方だと思いますが、私は理にかなった
むしろ自然な治療法と考えています。例えば、高くなってきた血圧を下げて
維持するために降圧剤を飲み続けることと同じで、年齢的な変化に対応して
健康を維持していくための治療法の一つと考えていただければと思います。

少量のホルモンを数年間補充することで支障なく日常生活を過ごすことが
可能になりますが、永久に続けるのではなく安定後は徐々に減量していき、
長くても60歳くらいまでには終了するのが一般的です。
治療で使用するホルモン補充量も、OC(低用量ピル)の1/3〜5、
月経があった時期の1/8〜10程度ですので決して不自然ではないと思います。 

また当初から懸念されていた乳癌の発生リスクについてですが、HRTを
5年以上連続で継続した場合に限ってその危険性が若干増えるという話は、
すでに更年期医療を行なう医療関係者の間では周知の事実となっていました。
しかし先ごろ国際閉経学会から「因果関係はない」という結果が発表され、
今となってはその心配も払拭され、世界的にもコンセンサスが得られています。
もっともこの問題は日本のマスコミにも責任があり、行き過ぎた報道のせいで
日本人はホルモン剤を怖がる国民になってしまった気がします(ピルも同様です)。
事実、HRTの世界的な普及率は欧米諸国20〜30%、北欧諸国では40%前後
なのに対し、日本ではまだ2%前後にとどまっています。(ピルも同じ傾向です)

HRTは今や安全で効果の高い治療法として確立されましたが、あくまでも
選択の医療です。更年期以降、心身ともに質の高い状態で過ごすために、
自分のライフスタイルに合わせて自分自身が選んでいく治療法なのです。


Q ホルモン補充療法(HRT)を受けようかと考えていますが
いつ始めていつ終れるのかがわかりません。教えてください。

A 開始時期は症状があれば閉経前からでも可能です。
辛く感じ始めた時が開始時ですが、閉経後5年以内の開始が最適です。
60歳以上で開始すると心疾患のリスクが上昇すると考えられていますので、
その場合は量を減らして服用していただく必要があります。
効果はすぐに実感していただけることが多いですが、
はっきりしない場合でも最低3ヶ月は継続してみてください。
効果があった場合の継続期間については特に決まりはありませんが、
急に終了すると、殆どの場合が最初の状態に逆戻りしてしまいますので、
中止してみたい時は医師とご相談して徐々に減らしていくことをお勧めします。
また効果を実感していただく限りは10年間以上でも継続可能ですが、
リスク&ベネフィットの点から5年間がひとつのメドと考えています。
3、4年経ったら徐々に服薬量を減らしていくのが一般的で、
その中で5年目以降のあり方を担当医とよく相談していく必要があります。
5年以上の長期間にわたり継続を希望される方はご自身で明確な目的を持ち、
起こり得るリスクも充分理解した上で納得して続けることが大切です。

Q 閉経前と閉経後では、HRTの治療内容は違うのでしょうか?

A 閉経前や直後の場合はエストロゲンとプロゲステロンを
間歇的に周期的併用する方法が最適です。休薬期間中に
少量の出血がありますが、この方法だと子宮体癌の発生を予防できます。
ただ何らかの理由(子宮筋腫など)で子宮を摘出された方は
エストロゲン単独の持続療法になります。
また閉経後数年が経過(2年以上)した方は、
子宮が萎縮して内膜が厚くならないので、休薬はせずに
エストロゲンとプロゲステロンを毎日使う持続療法が最適となり、最近では
3,4日に1回交換する張り薬が登場して管理がとても簡単になりました。
いずれにしても治療内容については担当医とよく相談しながら、
年齢や閉経後の状態に合わせて継続していくことが大切です。

Q 私は49歳で、更年期障害のために2年前からHRTとしてエストロゲンのみ
補充しています。生理もなく体調もいいのでこのまま続けてもいいでしょうか?

A エストロゲンだけを単独で続けて服用すると、子宮内膜が厚くなり
子宮体癌の発生リスクが高まりますので、子宮のある方はプロゲステロン
(黄体ホルモン)を併用する必要があります。併用の仕方としては、
月のうち10〜14日間併用する周期的投与法と、連続してずっと併用する
持続的投与法があります。いずれにしてもプロゲステロンを併用していれば
逆にHRTを受けてない人よりも子宮体癌の発生リスクは低くなります。

Q 私は40歳からOC(低用量ピル)を飲んでいます。今年51歳になりましたが
体調がいいのでこのまま飲み続けてもいいでしょうか?

A 避妊や月経関連の不調ならOCですが、50歳を過ぎると閉経している可能性もあり
HRTに移行した方がよろしいと思います。OCの力価(ホルモン剤としての効力)は
HRTの力価の約5倍ですので、51歳ならそんなに多くは必要ありません。
目安として妊娠の可能性がある40代前半はOC,半ばはどちらでもよく、
後半以降はHRTが基本的な治療のあり方と考えます。

Q ホルモン補充療法(HRT)で使う薬の剤形による違いを教えてください。

A 経口薬(飲み薬)と経皮薬(貼り薬、塗り薬)があります。
効果としてはどちらでも大きな差はありませんが、
経口薬の方が優れている点は、
骨粗しょう症、萎縮性膣炎、コレステロール値、認知症などの予防や改善など、
経皮薬の方が優れている点は、
肝臓への負担が少ないこと、中性脂肪値や血管への悪影響が少ないなどです。
経皮薬はお肌が敏感でかぶれやすい方には不向きですが、
そうでない方にはそのまま入浴もできるので管理が簡単と言えます。
担当医とご相談の上でご自分に合ったものを選択すればよいと考えます。

Q 閉経後のホットフラッシュがひどく、HRTを始めました。症状は劇的に改善
してきましたが、毎月、生理様の出血があります。妊娠する心配はないですか?

A HRTでは補充されたホルモンが自然に近いリズムで子宮に作用しますので、
黄体ホルモンの間歇投与法では生理様の出血が毎月あります。
しかし一旦閉経をした女性にHRTを始めても、排卵は起こりませんので
妊娠の可能性は全くありません。ただし閉経前の女性ですと、まだ時々
排卵があるはずなので、HRT中でも妊娠する可能性は否定できません。
妊娠を心配する場合はHRTではなくOC(低用量ピル)に変更した方が安心です。

Q 私は45歳のときに乳癌を患いました。あれから10年が経過し
主治医からは完治したと言われました。絶対にHRTは受けられませんか?

A エストロゲンには乳癌や子宮癌の癌細胞を増殖させる作用があるため、
癌の治療中の方にはHRTは行えません。しかし完治したのであれば
HRTを行うことは可能と思われます。ただし case by case ですので
主治医とよくご相談の上で、しっかりと納得した形で判断することが必要です。

Q 私は49歳からHRTを始めて10年が経過しました。この10年間は体調もよく
過ごせたのですが、主治医に「そろそろ60歳なので止めましょうか」と言われ
迷っています。どうしたらよいでしょうか?

A 60歳だからといって止めなければならない根拠はどこにもありません。
HRTは更年期障害の治療だけでなく、閉経後の女性の健康やQOL(生活の質)を
広くカバーしているからです。いつまで続けるかはお受けになっている方が
継続のリスク&ベネフィットをふまえた上で、自らが判断すべきと考えます。
中止するとエイジングは加速しますが、すぐに病気になるわけではありません。
ただし60歳以降も継続する場合は、徐々にホルモン量を減量したり
作用の弱い薬に変えていくのが好ましいと思われます。

Q 私は61歳です。閉経は49歳で10年以上前です。今からHRTは遅すぎますか?

A 開始年齢としてはギリギリだとは思いますが、開始するメリットはあります。
閉経後10年以上経過していますので、脳細胞の萎縮や骨密度の低下、
動脈硬化などはある程度進行していると思われます。それでもHRTの開始で
これから先の老化を少しでも緩やかにさせることが期待できます。


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