デリケートゾーン(外陰部)は角質層が薄く、しかも蒸れやすいので、とかく色々な
トラブルが起きやすい場所ですが、症状があっても他人には相談しにくいものです。

@デリケートゾーンの臭い

臭いの多くは「おりもの・雑菌」が「汗・皮脂」と混ざって酸化することで発生します。
膣分泌物(おりもの)には匂いで異性を惹きつけるという役割もあり、健常者では
乳酸菌がたくさん含まれていますので、少し酸味がかった甘酸っぱい匂いがします。
ところが外陰部は、角質層が薄くて皮膚炎を起こしやすいこと、尿や便の排泄口も
あること、それに雑菌の繁殖や感染などが加わることで特有の臭いが発生しやすい
ゾーンです。嫌な臭いは、生臭い、磯臭い、チーズ臭いなどの例えで表現されます。

原因1 外陰部の雑菌の繁殖によるもの 
  ・皮膚炎(ムレ、かぶれ)・・・汗に雑菌が繁殖して発生。多くは痒みを伴う
  ・月経・・・生理中の嫌な臭いは経血が空気に触れて酸化することで発生
  ・尿漏れ・・・陰毛についた尿を放置すると、雑菌が増殖して臭いを発生
  ・スソワキガ・・・外陰部のワキガのことで、腋と同じアポクリン腺からの臭い
2 感染症によるもの
  ・細菌性膣炎やトリコモナス膣炎ではおりものからの特有の刺激臭がある

細菌性腟炎


ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、嫌気性菌などさまざまな
病原菌が腟内で異常繁殖することによって起こる炎症。
炎症所見は少ないのに"臭いのきついおりもの"が特徴。
膣内の乳酸菌が減ると守りのバリアーが崩れ、病原菌が
異常繁殖するので乳酸菌が減らないような心がけが大切。
タンポンの抜き忘れが腟炎の原因となるので注意が必要。

Aデリケートゾーンの痒み

痒みの多くは、ムレやかぶれ、皮膚の摩擦などが原因で起きる皮膚炎によるものです。
外陰部は角質層が薄くて摩擦に弱い構造なので、下着やパンティストッキングなどで
締め付けられるデリケートゾーンは、ムレやかぶれで皮膚炎を起こしやすくなっています。
おりもの異常を伴う場合は感染性のものが疑われますので、早めの受診が必要です。
原因1 皮膚炎(接触性)によるもの
  ・ 下着の刺激や生理用品による擦れ・ムレ・かぶれ 
  ・ 長い時間の摩擦刺激(Tバックショーツの常用や自転車に長時間乗る)
2 感染症によるもの
  ・ カンジダ症・・・痒みと共にカッティングチーズ様のポロポロしたおりもの
     (ストレス、疲れ、妊娠中、抗生物質を服用中などで発症しやすい)
  ・ トリコモナス膣炎・・・痒みと共に強い刺激臭
  ・ 毛ジラミ・・・陰毛の毛根部に寄生すると強い痒みと灰白色のフケが出る
  ・ 股部白癬(いんきん)・・・Vゾーンに赤い湿疹を伴うかゆみ。男性に多い。
3 それ以外によるもの
  ・ 敏感肌やアレルギー体質(ボディソープ、制汗剤、ゴムなど)
  ・ 膣萎縮(更年期以降で粘膜が乾燥しやすい年代の方)
  ・ 心因性や糖尿病、慢性肝疾患、腎不全などの全身疾患

Bデリケートゾーンの痛み

原因1 接触性皮膚炎・・・下着や生理用品の擦れによる炎症で多くは痒みをも伴う
2 アレルギー・・・ボディーソープ以外に制汗スプレーや香水などによる皮膚炎
3 外陰炎・・・ナプキンなどのかぶれに細菌が感染。時に排尿痛や性交痛も伴う
4 性器ヘルペス・・・水疱が破裂して潰瘍となり、強い痛み、排尿痛、発熱を伴う
5 ベーチェット病・・・外陰部やその周囲に円形潰瘍ができ、痛みや発熱が出る
6 バルトリン腺炎・・・膣粘液を出す分泌口が詰まって腫れると強い痛みを生じる

性交痛


@挿入し始めの痛み

 ・炎症によるもの → 外陰炎、膣炎、バルトリン腺炎
 ・潤い不足によるもの → *前戯が不十分だったり、性体験が浅い場合
                 *セックスに対して恐怖感や嫌悪感がある精神状態の場合  

A挿入後のピストン運動に伴う痛み

 ・子宮内膜症 → 特にダグラス窩(子宮と直腸の間隙)に発症すると強い性交痛が出る
 ・萎縮性膣炎 → 更年期以降の女性では膣分泌液が減り、その潤い不足による摩擦痛。
             若い女性でも無月経などで長期間エストロゲン分泌が低下すると発症。
 ・膣カンジダ症 → 膣カンジダの再発を繰り返し、慢性化してしまっている方の場合では
             痒みやおりもの異常がなく、性交痛でしか症状が現れないことがある
 ・形態的なもの → 元々膣腔が狭い、性行為歴が浅いために膣壁の充分な伸縮性がない

B挿入後に奥を突かれると痛い

 ・子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、骨盤内感染症(クラミジア、淋病)
      *いずれも性交痛だけでなく、ひどい生理痛、下腹部痛、腰痛などの症状を伴う
      *内膜症は、生理前や排卵日になると性交痛などの症状が悪化するのが特徴

C性行為中〜終了直後の突然の腹痛

 ・卵巣出血 → 殆どが性行為直後に発症。右卵巣に多く、黄体期の性行為で起きやすい

Cデリケートゾーンの皮疹・腫れもの

原因1 毛嚢炎・・・*毛穴の奥に病原菌が入ることでニキビの様な赤い湿疹が現れる
          *剃毛時に傷を作ると起こりやすく、膿やしこりができることもある
2 化膿性汗腺炎・・・摩擦でアポクリン汗腺が詰まり、細菌感染により膿が溜まる
3 性器ヘルペス・・・外陰部やその周囲に水疱が現れ、破れると強い痛みを伴う
4 尖圭コンジローマ・・・性器イボとも言い、イボ状のものが外陰部周囲にできる。
5 粉瘤・・・毛包や皮脂腺にできた袋状の嚢腫。症状もなく感染がなければ放置可
6 バルトリン腺嚢胞・・・分泌口の詰まりでバルトリン腺が膨らむ。自然治癒もあり

★デリケートゾーンのトラブル予防策(@〜C共通)

     抵抗力を落とさないよう普段から食事や睡眠など生活のリズムを整える
     普段から通気性の良い服装を心がける(ジーンズよりもスカートがよい)
     ショーツは通気性の良いフルバックタイプを履き、摩擦を少なめに抑える
     毎日入浴時に正しい方法でお手入れをして雑菌や皮脂を洗い残さない
     生理用品の使用はできるだけ短い期間、短い時間の着用にとどめる。
     生理中の臭いはナプキンをこまめに交換する。タンポンの方が臭いにくい
     陰毛を減らす(毛が少ないと、尿やおりもの、経血が毛に付きにくくなる)
     おりもの異常や臭い・痒み・痛みなどが続く場合は必ず婦人科を受診する



STDは性行為で感染する病気の総称です。10代・20代を中心に
増加傾向にあり、最近では約100万人の感染者がいると推測されています。
感染したらパートナーも一緒に治療を受けるのが原則です。
感染予防として性行為の時には必ずコンドームを使用することが大切です。


カンジダ膣炎・カンジダ外陰炎

『カンジダ・アルビカンス』というカビの一種が膣内・外陰部に繁殖して起こる病気です。
カンジダ菌は常在菌として膣内に存在していますが、過労や妊娠などで免疫力が落ちて
いる時、抗生物質の乱用時やステロイドホルモン剤の服薬などが原因で異常増殖します。
性行為で感染する場合はパートナーが無症状なので、気付かないうちに感染しています。
妊娠中に感染しやすいので、治療しておかないと赤ちゃんに産道感染させてしまいます。
発病すると、膣内にカッティングチーズの様な、もしくは粥状の白いおりものが出現し、
外陰部や膣周辺が灼熱感を伴う強い痒みに襲われます。外陰部も赤くただれて腫脹し、
排尿痛も伴うことがあります。激しい掻痒感を感じたら、かきむしらずに受診しましょう。
治療は膣錠の使用や、外陰部に軟膏を塗ることで治りますが、再発が多い病気です。


トリコモナス膣炎

『トリコモナス原虫』という寄生虫による性感染症です。この寄生虫は男性の前立腺や
精嚢、尿道に寄生していることが多く、性行為で女性に感染することがほとんどです。
感染力が強く、性行為以外では便座や浴室の椅子・床からも感染することがあります。
感染すると外陰部が赤くただれて滲みるような痛みを生じ、黄色や緑っぽい泡沫状の
悪臭の強いおりものが出てきます。カンジダほどではありませんが、強い痒みもあり、
性交痛や排尿痛も伴うことが多いです。治療は内服や膣錠を10日間使って治します。
ピンポン感染の特徴があるため、パートナーも同時に治療を受けることが大切です。
治療中は感染を広げないために、公衆トイレやプール、温泉などの利用は厳禁です。
治療薬にはアルコール分解を阻害する作用があるため、治療中は禁酒が必要です。


クラミジア感染症

『クラミジア・トラコマチス』という微生物による性感染症で、世界でも日本でも最も多い
STDです。便座や温浴施設では感染せず性行為のみで男女間でピンポン感染します。
最近ではオーラルセックスによって感染し、咽頭炎を引き起こすケースも増えています。
男性では排尿時痛や分泌物が出るなどの症状がありますが、女性では痛くも痒くもなく、
感染しても殆どの人は無症状ですので、感染に気づかないまま経過しやすい病気です。
しかし中には感染後、約3〜10日間の潜伏期間を経て、子宮頸管炎を発症することで
多量の水溶性のおりものや膿性の黄色いおりものが出てくるため気付く場合もあります。
感染直後は子宮頸部に留まりますが、やがて本人の自覚がないうちに上行性に広がり、
子宮内膜炎・卵管炎・卵巣炎・骨盤腹膜炎などを引き起こし、不妊症の原因となります。
診断は血液検査と子宮の入り口の細胞を軽く綿棒でこするだけの簡単な検査です。 
治療は適切な抗菌剤を服用すると治ります。必ずパートナーも一緒に治療しましょう。


淋病

淋菌による性感染症です。淋菌は乾燥に弱く、また酸性の腟内では生息できないので
中性である尿道や子宮頚管の粘膜を好む特徴がありますが、これもクラミジアと同様、
最近ではオーラルセックスによって女性の喉からも検出されることが増えてきています。
淋菌は感染者が使用したタオル類や、浴室の床などからも感染する可能性があります。
感染後2日〜7日間の潜伏期間を経て子宮頸管炎を発症すると、おりもの異常がみられ
クラミジア感染とよく似ています。(クラミジアと淋病の両方同時にかかることもあります)。
女性の場合は症状が軽い為、感染した事に気づきにくいですが、パートナーは自覚症状
(ペニスからの膿、排尿時の痛み等)が出やすいので、それで気づくことが多い病気です。
放置すると、淋菌性膣炎・子宮内膜炎・卵管炎・骨盤腹膜炎に発展することがあります。
治療は適切な抗菌剤を服用すると治ります。必ずパートナーも一緒に治療しましょう。


性器ヘルペス感染症

2型の単純ヘルペスウイルスによる性感染症です。初感染後2〜7日間の潜伏期間を経て
外性器に水泡(水ぶくれ)ができ、その後、発熱や耐え難い強い痛みの症状が出てきます。
水泡が破れると円形の浅い潰瘍が左右対称に形成され、やがて外陰部周囲にも広がり
腟や膀胱にまで及ぶこともあります。潰瘍は2週間ほど続いた後になくなっていきますが、
ヘルペスの痛みは極めて強く、少し触れただけでも灼熱感を伴う激しい痛みを生じます。
尿道口付近にできると激痛のために排尿困難となったり、歩行障害が生じることもあります。
重症のケースでは太腿の付け根のリンパ腺が腫れたり、39℃の高熱が出ることもあります。
特徴として、症状が消えても体力が落ちるとまた再発することがよくあります。ただ再発では
水疱や潰瘍は限局性で広範囲に及ぶことは少なく、痛みもそれほど強くないのが特徴です。
適切な治療で3〜4週間で治りますが、しっかり完治させないと何度も再発しやすい病気です。


尖圭コンジローマ

『ヒトパピローマウィルス』の6型と11型による性感染症です。潜伏期間は約3ヶ月です。
イボ状のものが外陰部周囲や肛門周辺、膣口、子宮膣部にできますが、初期には多少の
痒みや不快感程度で痛みはありません。イボは米粒・小豆粒くらいの大きさで、にわとりの
鶏冠のようになり、やがてイボ状のものが徐々に増えてカリフラワー状になり、外陰部全体が
腫れあがります。そうなると発熱・排尿痛・性交痛・歩行時の痛みなどの症状が出てきます。
イボ自体はとても柔らかく、崩れやすいのが特徴で、これが癌化することはありません。
治療は軟膏塗布や手術を必要としますが、再発することもあり数回の治療が必要となります。


毛ジラミ

「ケジラミ」は吸血性昆虫で体長1mm前後の寄生虫の一種です。主に人の陰毛に寄生します。
毛ジラミが陰毛の毛根部に寄生すると、強烈な痒みに加えて陰毛の根元に灰白色のフケが
無数に見られるようになります。疑った時は白系のショーツを履くことで確認しやすくなります。
毛ジラミは毛と毛が接触するだけで容易に感染しますので、性交渉はもとより、温泉やプール
などの公共施設、また毛ジラミに感染している人と毛布やタオルを共有することでも感染します。
治療はまず陰毛を全部剃ってしまうのが原則ですが、市販のスミスリンシャンプーも有効です。
また感染後1〜2ヵ月して症状が出るため、その頃に性交渉したパートナーの検査も必要です。




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